プロの目⑯謝罪会見で大切なこと
エイレックスでは、事件や事故が起きて企業が謝罪会見をする場合、常にお詫びの姿勢を示すことが大切だとアドバイスしています。「そんなの当たり前のことではないか」「何を今さら…」と頭をよぎった方がいらっしゃると思います。ですが、模擬記者会見(メディアトレーニング)をしていますと、この点がすっぽり抜けてしまう方が見受けられます。今回は、なぜそんな事態になるのか、会見の登壇者が陥りやすいポイントをお伝えします。
先日、ある製造拠点で「火災が発生し、構内にいた一般の方が避難中に負傷する事故が発生した」との想定で模擬記者会見を実施しました。記者役が「避難は適切だったのか?」と質問したところ、製造拠点の責任者の方は「けがの原因がどこにあるのか、今後警察の捜査があるので、我々からは言えない」と強気に回答されました。負傷者へのお詫びの言葉がないまま回答しており、謝罪の姿勢が見えず、会社の正当性を強調している印象を受けた場面でした。
当然、会見で業務上の過失につながりかねない発言は控える必要がありますが、被害者やその家族へのお詫びやケアする気持ちを、言葉にして発信することは不可欠です。ただ、いざ目の前の記者から厳しい追及を受けると会社のスタンスを守る意識が強まり、お詫びの姿勢を示すことが抜けてしまう、そんな状況に陥ってしまうのです。
会見の第一の目的は、謝罪すべき対象や不安を抱えるステークホルダーに対して誠心誠意を見せ、レピュテーションの低下をできるだけ抑えることです。どんな質問を受けても、「記者の向こうには、被害者や迷惑を掛けた人がいる」と意識し、会見に臨む必要があります。
(2023/11/15)