危機管理広報

プロの目㉔記者はどこから情報をつかむのか

 会社で事件や事故、不祥事が発生した際に、記者から予想外のタイミングで問い合わせを受け、戸惑った経験をした広報の方も多いのではないでしょうか。先日、ある製造業の広報担当の方からこんな話を伺いました。工場で事故が発生し、消防に通報したそうですが、通報の直後に記者から本社広報に問い合わせが入ったそうです。工場から本社に報告も入っていない段階で、「あまりの問い合わせの速さに驚いた。一体どこから情報をつかんでくるのか…」と目を丸くしていました。記者はどこから事件や事故、不祥事の端緒をつかむのか、記者時代の経験から、その一部をご説明します。

 上記のような工場事故の場合、最も多いのは警察や消防から情報を得るケースです。事件事故を担当する記者は、日ごろから警察署で取材活動をしていますので、警察・消防が多数出動するような事態はすぐに察知できます。また、警察署にいない場合でも、定期的に警察や消防に電話を入れ、特異な事案が起きていないか確認しています。常にアンテナを張っていますので、実際に私も、別件の取材途中にパトカーが複数緊急走行している場面を目撃し、そのまま追いかけたこともありました。

 最近多いのは、SNSをきっかけにしたものです。SNSには目撃者の投稿や、内部告発などの情報があふれています。警察や行政、会社が公式に発表する前に、有益な情報を得られることもあり、多くのメディアが活用しています。

 不祥事が発生した場合の企業の対応は「初動が大切」と言われていますが、それはメディアも同様です。ネットへの速報が重視されるようになり、他社よりも早く速報ニュースを出すことが求められます。また、現場到着が早いほど、写真や映像を撮ることができたり、目撃者の証言を聞けたりするなど、詳細な取材が可能です。それによって、記事に他社が知り得ない情報を盛り込み、読者や視聴者へのよりよい情報提供につなげたいとの思いがあります。

このように、情報をいち早く入手した記者から会社に問い合わせが入り、情報の開示を急かされることは往々にしてあります。そんな時でも、担当者としては、憶測で回答せず、冷静に確認できている事実のみを伝えるという基本を忘れてはいけません。正確な情報発信が記者への信頼にもつながります。また、想定以上に素早いメディア対応が求められることを覚悟し、日ごろから、情報の収集体制や連絡体制を整え、いざという時にスピーディーに動けるよう備えておくことが重要です。